夜中にトイレで目が覚める。 尿の勢いが
前より弱くなった気がする。
出しきったはずなのに、なんだかすっきりしない。
そんな変化を「年のせいだから仕方ない」と
そのままにしていませんか。
こうした「おしっこの悩み」は、50代ごろから増える
前立腺肥大症のサインかもしれません。
人に相談しにくい内容だからこそ、
まずは正しく知ることが安心への第一歩です。
この記事では、看護師として30年以上、多くの男性患者さんと
接してきた立場から、前立腺肥大症の初期症状、
自分でできるチェック、受診の目安を
わかりやすくお伝えします。
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前立腺肥大症とは?50代から増える「おしっこの悩み」の正体

前立腺はどこにある?どんな働きをしている?
前立腺は、男性だけにある臓器です。
膀胱のすぐ下にあり、尿の通り道である尿道を
ぐるりと取り囲んでいます。
大きさはクルミくらいで、精液の一部を
つくる働きをしています。
尿道を取り囲んでいる場所にあるため、前立腺が大きくなると
尿の通り道が圧迫されます。
これが、前立腺肥大症でおしっこの悩みが
起こるしくみです。
また、大きくなった前立腺が膀胱を刺激して、
尿が少ししかたまっていないのに「トイレに行きたい」
と感じやすくなることもあります。
年齢とともに増える、よくある変化
前立腺肥大症は、年齢とともに増えていく病気です。
日本泌尿器科学会によると、
70歳代では10人に1人以上が前立腺肥大症と診断されています。
大切なのは、前立腺肥大症は「がん」ではないということです。
良性の病気で、治療によって症状をやわらげることができます。
ただ、症状がゆっくり進むため、「年だから」「みんなそうだから」
と見過ごされやすいのも特徴です。
臨床の現場でも、「もっと早く相談すればよかった」
とおっしゃる方に何度もお会いしてきました。
おしっこの変化は、体からの大切なお知らせです。
まずは、どんな症状がサインになるのかを知っておきましょう。
見逃しやすい前立腺肥大症の初期症状
前立腺肥大症の症状は、大きく3つに分けられます。
「出すとき」「ためるとき」「出したあと」の3つです。
出すときの症状(排尿症状)
- 尿の勢いが弱くなった
- 尿が出はじめるまでに時間がかかる
- お腹に力を入れないと出にくい
- 途中で尿が途切れる
- 排尿に時間がかかる
前立腺が尿道を圧迫するため、
尿が通りにくくなって起こる症状です。
ためるときの症状(蓄尿症状)
- トイレが近い(昼間に何度も行く)
- 夜中に何度もトイレで起きる(夜間頻尿)
- 急に強い尿意がきて、がまんしにくい
- トイレに間に合わず、少しもれてしまう
意外かもしれませんが、前立腺肥大症では
「出にくい」だけでなく「トイレが近い」
という症状もよく起こります。
実際に、夜中のトイレがきっかけで気づく方も少なくありません。
出したあとの症状(排尿後症状)
- 出しきったのに、すっきりしない(残尿感)
- トイレのあと、少し動くと尿がもれる
このような症状が1つでも続いている場合は、
次の章のチェックで、いまの状態を確かめてみてください。
自分でできるチェック|国際前立腺症状スコア(IPSS)

7つの質問で、症状の程度を数字にする
前立腺肥大症の診察では、「国際前立腺症状スコア(IPSS)」
という質問票がよく使われます。
最近1か月のおしっこの状態について、7つの質問に0〜5点で答え、
合計点で症状の程度をみるものです。
質問の内容は、次のようなものです。
- 排尿後に、尿がまだ残っている感じがあったか
- 排尿後2時間以内に、もう一度トイレに行くことがあったか
- 排尿の途中で、尿が途切れることがあったか
- 尿をがまんするのがつらいことがあったか
- 尿の勢いが弱いことがあったか
- 排尿を始めるために、お腹に力を入れる必要があったか
- 夜寝てから朝起きるまでに、何回トイレに起きたか
それぞれ「まったくない(0点)」から「ほとんどいつも(5点)」までで答えます。
7つ目の夜のトイレは、回数がそのまま点数になります(5回以上は5点)。
点数はあくまで目安。気になったら受診を
合計点の目安は、次のとおりです。
- 0〜7点:軽症
- 8〜19点:中等症
- 20〜35点:重症
8点以上なら、一度泌尿器科で相談することをおすすめします。
ただし、この点数だけで前立腺肥大症かどうかは決められません。
頻尿や残尿感は、膀胱炎や前立腺炎、糖尿病、心臓や腎臓の病気など
でも起こることがあります。
点数が低くても、困っている症状があるなら、
受診してかまいません。
「この程度で病院に行っていいのかな」と迷う方は多いのですが、
泌尿器科の先生は、こうした相談に毎日向き合っています。
遠慮はいりません。
何科に行けばいい?受診の目安と検査の流れ
こんなときは早めに泌尿器科へ
前立腺の相談は、泌尿器科が専門です。
近くにない場合は、まずかかりつけの内科に相談して、
紹介してもらう方法もあります。
次のようなときは、早めの受診を考えてください。
- 夜中に2回以上トイレで起きる日が続いている
- 尿の勢いが弱くなり、出しきるのに時間がかかる
- 残尿感や、トイレのあとの尿もれが気になる
- 健康診断で「PSAが高い」と言われた
- IPSSのチェックで8点以上だった
PSAは、血液で調べる前立腺の検査です。
日本泌尿器科学会は、PSAが高いのは前立腺がんだけでなく
前立腺肥大症や前立腺炎でも起こることがあるとしています。
「高い」と言われたら、自己判断せず、
早めに泌尿器科で相談しましょう。
すぐに受診が必要なサイン
次のような場合は、様子を見ずに、すぐに受診してください。
- 尿がまったく出ない(尿閉)
- 下腹部が張って苦しいのに、尿が出ない
- 尿に血が混じる
- 排尿時に強い痛みや発熱がある
尿がまったく出ない「尿閉」は、
前立腺肥大症が原因のことが多い状態です。
膀胱に尿がたまったまま出せないときは、
管(カテーテル)で尿を出す処置が必要になります。
夜間や休日でも、救急外来に相談してください。
泌尿器科ではどんな検査をする?
「何をされるのか分からない」ことが、受診をためらう理由になりがちです。
一般的には、次のような検査で状態を確かめます。
- 問診と症状の質問票(IPSSなど)
- 尿検査
- 超音波(エコー)検査:お腹の上から前立腺の大きさや残尿の量をみる
- 尿の勢いを測る検査
- 血液検査(PSA)
- 必要に応じて、直腸からの触診
治療は、症状の程度に合わせて、生活習慣の見直しや飲み薬から始めることが多く
必要な場合には手術も検討されます。
どの方法がよいかは人によって違うため、医師とよく相談して決めましょう。

毎日の暮らしで気をつけたいこと
尿閉を招きやすい「飲酒」「長時間の座りっぱなし」「一部の薬」
日本泌尿器科学会は、尿閉を起こしやすくするきっかけとして、
長時間座ったままでいること、飲酒、一部の薬を挙げています。
薬では、咳止め、かぜ薬、精神安定剤、不整脈の薬などの一部が当てはまります。
市販のかぜ薬を飲むときも、前立腺肥大症と言われている方は、
薬剤師に一言伝えると安心です。
冷え・水分・トイレ習慣の見直し
体が冷えると、トイレが近くなりやすくなります。
これからの季節は、お腹や腰を冷やさない工夫をしてみてください。
夜間頻尿が気になる方は、寝る前の2〜3時間は、
たくさんの水分やお酒、カフェインを控えめにするのも一つの方法です。
ただし、水分を減らしすぎると、
脱水や血液がドロドロになる原因になります。
日中は、こまめに水分をとるようにしましょう。
また、適度な運動で体を動かすことは、
冷えや座りっぱなしの対策にもつながります。
毎日のウォーキングなど、無理なく続けられることから始めてみてください。
私自身、看護の現場で「もっと早く来ればよかった」
という声を何度も聞いてきました。
おしっこの悩みは、恥ずかしいことではありません。
年齢とともに多くの男性が経験する、ごく自然な体の変化です。
だからこそ、ひとりで抱え込まず、早めに専門家の力を借りてほしいと思います。
まとめ
前立腺肥大症は、50代ごろから増える良性の病気です。
尿の勢いが弱い、トイレが近い、夜中に起きる、残尿感がある。
こうした変化は、前立腺からのサインかもしれません。
まずは国際前立腺症状スコア(IPSS)で、
いまの状態をチェックしてみましょう。
8点以上の方や、困っている症状がある方は、
泌尿器科で相談してください。
尿がまったく出ないときや、血尿があるときは、すぐに受診が必要です。
早めに相談すれば、生活習慣の見直しやお薬など、
選べる方法も広がります。
「年のせい」とあきらめず、体の声に耳を傾けてみてください。
参考
- 日本泌尿器科学会「尿が出にくい・尿の勢いが弱い・尿をするのに時間がかかる」 https://www.urol.or.jp/public/symptom/05.html
- 日本泌尿器科学会「尿がまったく出ない」 https://www.urol.or.jp/public/symptom/06.html
- 日本泌尿器科学会「PSAが高いと言われた」 https://www.urol.or.jp/public/symptom/08.html
- 健康長寿ネット(長寿科学振興財団)「前立腺肥大症の症状」 https://www.tyojyu.or.jp/net/byouki/zenritsusenhidaishou/shoujou.html
「病院に行く前に、まず誰かに話を聞いてほしい」という方は、看護師による男性健康相談もご利用ください。必要に応じて、受診の目安もお伝えしています。

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